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2024.09.20

お知らせ

果実の長期保存に効果あり

静岡県立農林環境専門職大学

農学博士

山家 一哲

私は、静岡県立農林環境専門職大学短期大学部で、ポストハーベスト、つまり収穫後の果実の長期保存に関する研究をしています。近年、消費者の健康志向が高まり、農薬を使わない保存技術の需要が増えています。そこで、私たちはエアーリバイブという革新的な技術に着目しました。エアーリバイブは、光触媒技術を利用して果実の鮮度を保ち、腐敗を防ぐための画期的な保存方法です。
エアーリバイブの主な働きは、果実が放出するエチレンガスを分解することです。エチレンガスは、果実が自ら熟成を促進し、最終的に腐敗する原因となるホルモンです。従来の保存方法では、このエチレンの放出を防ぐために農薬や化学薬品が使われていましたが、エアーリバイブは光触媒の力でこのエチレンを分解するため、薬剤に頼らずに腐敗を抑えることができます。これにより、果実の鮮度を長期間維持できるのです。

私たちの研究では、特に柑橘類での効果を確認しています。例えば、シークヮーサーや温州みかんをエアーリバイブを使って保存すると、保存期間中に色や酸味が失われにくく、鮮度が保たれることがわかりました。通常、保存中に果実は酸味や風味が落ちますが、エアーリバイブを使うことでその劣化を防ぐことができます。加えて、農薬を使わないため、消費者にも安心して提供できる技術です。

さらに、エアーリバイブは柑橘類に限らず、イチゴやイチジクのような保存が難しい果実にも応用可能です。これまで短期間でしか流通できなかった果実も、エアーリバイブを使用することで長期間保存でき、遠方の地域や海外への輸出も可能になります。これにより、日本国内の農産物流通がさらに広がり、国際競争力の向上にもつながるでしょう。

エアーリバイブのもう一つの利点は、農業現場での労働負担の軽減です。従来は果実の腐敗や劣化を防ぐために頻繁にチェックが必要でしたが、エアーリバイブを使えばチェック回数を減らすことができ、農作業の効率化が図れます。また、農薬の使用量が減るため、環境負荷の軽減にも貢献します。持続可能な農業を実現するために、エアーリバイブは非常に有効な技術です。

今後、エアーリバイブは柑橘類だけでなく、さまざまな果実や農産物に応用されることが期待されています。例えば、保存性の低いイチゴやイチジク、モモ、ブドウなどにも効果があると考えられており、これらの果物が長期間保存できるようになれば、輸出市場への対応力も向上します。エアーリバイブを導入することで、農家や流通業者は果実の品質を長期間維持し、消費者に新鮮な商品を提供できるようになるでしょう。

エアーリバイブは、単に果実の保存技術としての効果にとどまらず、農業全体の効率化や環境保護にも貢献する技術です。私たちが目指すのは、農薬を減らしながらも高品質な農産物を安定して供給できる農業の実現です。エアーリバイブはそのための重要なツールとなるでしょう。今後もこの技術を進化させ、より多くの農産物に適用することで、農業の未来を切り拓いていきたいと考えています。

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